障がい者への相続

親亡き後も、障がいを持つ子ときょうだい達が笑って生きていけるように。行政書士 河野八十八

親亡き後のことを考えよう。

障がいを持つ子がいる家庭にとって、とても切実な問題です。

ご両親は、自分たちが亡くなったらこの子の将来の生活はどうなってしまうのかと安心する日はありません。きょうだい達へ親の亡き後のすべてを託すことが正しい選択なのかどうかも答えの出せない悩みです。行政や制度は、この子に対して十分なサポートをしてくれるのか、また、十分なサービスを受けているかどうか誰が見守ってくれるのかの保証もありません。

これは、いわゆる「親亡き後問題」と呼ばれています。

しかし、「親亡き後」とされていますが、親の高齢化や病気などによって子の世話ができなくなる時や亡くなった後にできることの選択肢は残念ながらほんの少しです。ですから、この問題は、親亡き後に始まる現実に、親が元気なうちにどれだけ準備をしておけるのかことが解決に結びつく、というものです。

障がいといっても先天性のものから病気事故による後天性のもの、程度についても軽度から重度までさまざまです。家族の事情もそのご家庭ごとにそれぞれ違い、1つとして同じものはありません。また、私たちは、障がいのあるなしに関わらず、一人で生きているのではなく、他者との関わりの中でこそ生きていけます。

ですから、「親亡き後問題」を「親が亡くなった時に残された障がいを持つ子の問題」と大きなくくりで考えることには限界があります。それを踏まえた上で、多くの家庭が持つ親亡き後問題とその準備について考えることはもちろんですが、それぞれの家族の事情を把握した上で、共に解決に結び付けたいと思っています。

結局、お金がない私たちは何もできないってことですか?

「結局、お金がある家族はなんとかなるけど、そうでない家族はどうにもならないってことですか?」

私が、親亡き後問題の相談を受ける中で投げかけられた率直な質問です。
親亡き後問題の対策として、障害者自立支援法を始め行政制度や成年後見人など、“活用できる”とされるものがあり、それらのセミナーや説明会なども多く開催されています。ですが、実際にセミナーや説明会を受けてみても、その制度についての説明や普段聞きなれない言葉が多く「難しい」「理解できない」「必要なのかわからない」と感じてしまう方も多く、「わかるまで説明を聞いて理解していこう」というよりも「制度のことは難しくてよくわからないし、お金があるご家庭ならできることでも私の家庭には無理なこと」とあきらめにも似た、ためいきが聞こえる実情があります。

そういった実情を知り、資産のある家庭だけでなく、ごく普通の家庭や、親が高齢になっている家庭、母子家庭、資産と言えるものが少ない家庭、すべてのご家庭が「親亡き後問題」に対してできること、やるべきことを支援していこうという気持ちが強くなったことが、私がこの問題に取り組み始めたきっかけです。

親の最大の悩み<この子、どこで生活したらいいの?>

障がいを持つ子がいる家庭にとって、とても切実な問題です。

一般的に、親御さんと同居している障がいを持つ子の生活は、日中は就労継続支援B型や生活介護などの通所サービスを受け、夜間休日はご自宅を中心としています。

このご自宅を中心とする生活が、親亡き後にどう変化するか、その変化に障がいを持つ子は対応できるのかどうか、これがとても重要な問題で、最大の悩みとなります。

すでにきょうだい達が同居していたり、近くに住んでいる場合は、その方たちに親代わりのサポートを引き継いでもらうことが基本的にはベストですが、親と同じことを同じだけの愛情をもってサポートし続けることは、きょうだい達にとって大きな負担となることも現実です。

ですから、親亡き後の生活は、“親亡き生活を始める”ことの問題と、“親亡き生活を続けていく”ことの問題が重なることに注意しなければいけません。

仮に、親亡き後も自宅を中心とする生活を始めることができたとしても、「専門的な施設を利用すれば、いざという時の迅速な対応が期待できる。」「サポートするきょうだい達の身体的・精神的負担が少しでも軽減できる」といった理由から、グループホームやケアホームの利用を希望されるケースがとても多く見られます。

引き継ぐきょうだい達の最大の悩み<私たちは何をすればいいの?>

親は「きょうだい達には別々の人生がある」「自分たちが苦労してきたからこそ、きょうだい達に背負わせることはできない」と考えます。しかし、きょうだい達がまったく関わらない障がいを持つ当事者の生活とはどのようなものでしょうか。また、きょうだい達自身は全く関わりたくないと考えているのでしょうか。

成年後見制度のことをご存じの方も多いと思いますが、第三者(親族以外)の後見人と親族の後見人では違いますし、後見人がいれば何もかも安心というわけではありません。成年後見制度は、当事者の生存中の制度ですから、当事者の死後の対応はどうしても親族が関わらざるを得ません。また、相続の場面では様々な問題が生じますし、親族が後見人になると、障がいを持つきょうだいの世話を何から何まで引き受けないといけない、といった誤解もあります。

何よりも、障がいを持つ子供のことは、親が全て世話をしていたため、また、家族が集まって親亡き後の問題を話し合う機会がほとんど無いため、親亡き後の世話を引き継ぐ側に必要な知識が無く、何をすればよいのかすらわからず、知る機会もないということが少なくありません。

私たちにできること

私たちは親亡き後の問題について、家族や関係者の方々から事情やご相談をお聞きしていますが、その中で感じることは、当事者や関係者のみなさんが余りにもついて知らなさすぎる、誤った理解をしている、といった現状です。また、親亡き後問題は複雑で、家庭の事情も色濃く影響しますから、何を相談すればよいか、どこに相談すればよいか、どこまで話してもよいか、わからないことばかりといった声も聞かれます。

私たちは、そういった諸問題に対応するために、親亡き後の障がいを持つ子供の生活のためにできることは全てやるという姿勢でトータルサポートをいたします。

どうか一人で悩まないで、私たちと共に解決しましょう。

OGK~親亡き後も元気で暮らす~スタッフブログ

「OGK〜親亡き後も元気に暮らす〜」の活動や報告を日々公開しています。
皆さまと同じ境遇で悩んでいらっしゃる方々のお声や解決へのヒントなどをお知らせできればと思っています。

ページの先頭へ戻る